日本財団 図書館


 

は確かだが、現在は必ずしも青年の家だけがこのような役割を担っているわけではなく、さまざまな機関や民間企業でも同様の機能を持ち、青年の家以上のサービスを提供している所も数多くある。もちろん安価で(あるいは無料で)利用できるというメリットは周知されているが、宿泊研修や自然体験だけでは青年のための施設として生き残ることは難しくなっている。現代の青年の多様な要求に応えるためには、必然的に青年の家もさまざまな機能を持つ施設へと転換していく必要がある。
青年が主力である青年の家は、単に活動の場としての機能だけではなく、若者文化、青年のホットな情報の発信基地、キーステーションとしての一面を備えることが必要であろう。昨今のパソコンの急速な普及によってインターネットやパソコン通信はすっかり一般化し、国境を越えて世界の最新情報を容易に入手できるようになった。青年の家も、若者に関するさまざまな情報を容易に入手できるような通信ネットワークのシステム等を自ら備えるのは当然として、サービスとして提供することをも視野に入れて本格的な情報化社会に対応していくことが必要なのではないだろうか。
また、若者に関する情報の発信基地という点では、地域で活躍する若者の自主サークルやグループの活動の支援拠点としての役割も重要である。たとえば、相談機能である。青年向けの情報の提供や、講師・指導者などの人材(必ずしも施設職員というわけではなく、地域の指導者を紹介することも含まれる)の提供などを通じて活動の支援を行うことや、主催事業・研修会を通じて地域の指導者を養成することなどが主として考えられる。現に、いわゆる都市型・非宿泊型の青年の家では、若者の自主サークルの活動拠点としての利用が大部分を占めるというケースもある。
地域社会の教育力の低下が言われ初めて久しいが、青年の家は家庭・学校・地域のいずれの機能も合わせ持った施設である。この機能を生かし、家庭・学校・地域のそれぞれの取り組みを有機的につなぐキーステーションとして、それぞれの活動を助けていくことも、今後重要になってくると思う。かつての大人は、地域の子供に対して声をかけたり、叱ったりということをごく自然にしてきた。現在、それが人間関係の希薄化とともに失われてしまっている。青年の家を拠点として、地域の皆が青少年を守ってくれるような取り組みのネットワークが復活することは、大きな目標である。

 

第8条 支店づくり
青年の家が行っている主催事業は多種多様である。また、地元の市町村、あるいは都道府県、社会教育関係団体も、さまざまな取り組みをしている。しかし、それぞれが単独で開催できることにはおのずから限界があるし、また、開催に大きな労力を必要とする場合も多い。しかし、相互に協力関係を結び、共催や協賛という形で運営や資金等を分担し、人間の交流を盛んにすれば、事業展開のうえでより効果的なものが可能になると思う。そのためには、普段から相手が来てくれるまで待つのではなく、さまざまな機会をとらえ、決して押し付けがましくならない程度に、青年の家の機能を「出前」することも一つの方法である。
緊密な協力体制をつくり、地域に対しさまざまな形で還元を行っていくことが地域に開かれた施設への道である。こうして、青年の家のファンを地域に広げていくことによって、青年の家

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION